【書評】DeNA創業者・南場智子が『不格好経営』で語る失敗からの立ち直り方とは?

不格好経営

ずーみーの評価:★★★★☆
読みやすさ:簡単

『不格好経営』ってどんな本?

本書はDeNA創業者の南場智子さんによる自伝的社史である。なんの前知識もなく読み始めたのだが、とにかく面白い。3分の1ほど読んだころにはすっかり南場さんとDeNAのファンになってしまった。

ここで、南場さんの経歴を簡単にご紹介する。1962年生まれ、新潟県出身。非常に厳格な父親のもとで育ち、父親から逃げるように東京の津田塾大学に進学。大学の先輩に誘われ、「コンサルってなんですか?」という状態で戦略コンサルの大手・マッキンゼーに入社。上司は大前研一だった。入社当初はダメ社員で、仕事から逃げるために海外へMBA留学。帰国後、人前で自分の弱さを素直に出せるようになったのがきっかけとなり、めきめきと仕事で頭角を現す。マッキンゼーの同僚、紺屋勝成氏と結婚。コンサルタントとしてぶいぶい言わせていた1999年、「日本でインターネットオークションサイトを始めたら儲かるのでは?」と思いつき、仲間と脱サラしてDeNA設立。

『不格好経営』では、DeNA創業時から南場さんが夫の看病のため社長を退任した2012年頃までが語られる。最大の見どころは、創業時の経営に関するドタバタ劇だ。南場さん自身は当時をこう回想している。

「それにしても、マッキンゼーのコンサルタントとして経営者にアドバイスをしていた自分が、これほどすったもんだの苦労をするとは・・・」

エリート集団のくせして失敗のフルコースを引き起こす彼らのエピソードはかなり笑える。それと同時に、「起業家は失敗した時が真の勝負だ」というメッセージを受け取った気がする。起業家が転んだ時の立ち上がり方を教えてくれる良書だと思った。

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起業家は「とんでもない苦境」ほど張り切ろう

本書の中で特に印象に残ったところをご紹介したい。

私は、苦しいときにふたつのことを意識する。

ひとつは、とんでもない苦境ほど、素晴らしい立ち直り方を魅せる格好のステージだと思って張り切ることにしている。

そしてもうひとつは、必ず後から振り返って、あれがあってよかったね、と言える大きなプラスアルファの拾い物をしようと考える。うまくいかないということは、負けず嫌いの私には耐えがたく、単に乗り越えるだけでは気持ちが収まらない。おつりが欲しい、そういうことだ。

転んでもタダでは起きないド根性。僕は南場さんのこの考えにとても共感できたのだが、あなたはどうだろう?

ところで、昨年12月にWELQ(ウェルク)問題でDeNAの謝罪会見が開かれたのは記憶に新しい。取締役として会見に出席した南場さんは、その2日前にガン闘病中だった夫を亡くしたばかりだったそうだ。あの謝罪会見は、彼女にとってかなりの苦境だったに違いない。だが、転んでもタダではおきない南場さんとDeNAなら、きっと素晴らしい立ち直り方をするだろうと思っている。

WELQ問題謝罪会見

WELQ問題の謝罪会見。右端が南場氏。彼女なら素晴らしい立ち直りを見せてくれるはず。出典:PRESIDENT Online

続いて、コンサルだった南場さんが起業した理由。

愚かなおごりもあった。自分が経営者だったらもっとうまくできるんじゃないだろうか。なんでもっと思い切った改革ができないのか。なぜ中途半端に実施するんだ。私だったら・・・。もしそんなふうに感じているコンサルタントがほかにもいたら優しく言ってあげたい。あなたアホです。ものすごい確率で失敗しますよ、と。

コンサルとしては一流だった南場さんだが、起業家としては未熟だったという話。マッキンゼーでトップ成績だった彼女がそう言うのだから、ただのサラリーマンが起業したいなら勉強が必須であることは言うまでもない。

南場さんの場合、いきなり組織化から起業をスタートしてしまったため、苦労もかなり大きかったものと思われる。ドラクエ起業論でも述べたが、組織化は難易度が高いので初心者にはおすすめしない。もし南場さんが人生をやり直せるとしたら、もっと違った方法で起業するのではないだろうか?

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仲間を増やそう、ということで、川田とナベにひとりずつ連れてくるように言った。条件はたったひとつ。自分より優秀なヤツ。

南場さんが成功できた理由をたったひとつだけあげるなら、自分より優秀な仲間を選び続けたからだと思う。凡庸な経営者は、使い勝手がいい子分ばかりを集めてしまい、その組織は烏合の衆となってしまう。自分より優秀な者を素直に認める力、それが南場智子の経営者としての特筆すべき資質だろう。

 

DeNAの競争力の源泉は、とよく訊かれるが、答えは間違いなく「人材の質」だ。人材の質を最高レベルに保つためには、①最高の人材を採用し、②その人材が育ち、実力をつけ、③実力のある人材が埋もれずにステージ乗って輝き、④だから辞めない、という要素を満たすことが必要だ。

離職率は創業当時から低く、その点で苦労したことはないが、採用はものすごいド根性で社をあげて取り組み続けることで高い質を維持している。私も年間30回の新卒向け会社説明会をすべて自分で行うなど、率先して膨大な時間を使ってきた。社長退任後の現在も一番大事な仕事として取り組み続けている。

本書を読んだ後、南場さんのことをもっと知りたくなって、10年前の「プロフェッショナル 仕事の流儀」をYouTubeで観た。動く南場さんは、本当によく動き、よく喋る。関係ないが、僕はああいうおばちゃんに結構好かれるタイプなので、とても親近感が湧いた。

ドキュメンタリーの中で印象的だったのは、彼女の人の育て方に関する哲学だ。「仕事の失敗は仕事でしか取り返せない。そして、仕事の成功体験だけが人を成長させる」というメッセージは、とても説得力があった。

 



映像の中で企画会議のシーンが何度も出てくるが、社長と社員のフラットな関係に驚いた。てっきり、DeNAはIT企業だからスティーブ・ジョブズよろしくトップダウン企業なのかと思っていたが、映像で見る限り、これは完全なるボトムアップ企業である。「経営者6タイプ」という記事で、DeNAはビジネスモデルタイプだと定義づけたことがあるが、かなり組織マネジメント寄りのビジネスモデルタイプだと言えそうだ。

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まとめ

失敗からの立ち直り方や組織論など、本書から起業家が学ぶべきことはたくさんある。特に上場企業をつくりたい人は絶対に読むべき本だと思った。

ところで、本書の内容とは別に僕が勉強になったのは、「物語が持つ力の強さ」だ。別に僕は、もともと南場さんのファンだったわけでもなんでもない。ところが、たった数十ページの物語を読んだだけで、僕は彼女に完全にノックアウトされてしまったのだ。南場さんだけではない。現社長の守安さんや、前会長の春田さんなど、他の登場人物のことまで好きになってしまった。

物語には、人を虜にする力がある。もともとドラマメーカーだった僕は、以前からそのことを意識して自分のビジネスに取り入れてきた。昨年は自伝小説を出版したし、このブログでも起業物語を書いている。そんな物語が持つ力の強大さを、改めてまざまざと見せつけられた気がした。

現在、WELQ問題で苦境に立たされている南場智子氏。『不格好経営』の第2弾が出るなら、苦境から立ち直った彼女の物語をぜひ読んでみたい。

 


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映像制作ZOOMY VIDEO代表。テレビ制作会社をクビになったのをきっかけに、2年前にデジカメ1台で起業。当ブログでは、自分が起業で苦労・失敗した経験をもとに、知識0のサラリーマンが1年以内に月収50万以上稼ぐ起業家になる方法を発信中。